防災食(備蓄食)と非常食の違いとは?備蓄のポイントや目安量も解説
防災備蓄は緊急的な避難、避難生活を想定しなければなりません。曖昧な判断基準で選んでしまうと、「賞味期限が切れた」「調理できない」などのトラブルが起こるリスクもあります。
そのため、「非常食と防災食って何が違うの?」「何をどれくらい備蓄すれば良いのかわからない」など、基本的な疑問は解決しておきましょう。
かつて非常食は乾パンのような長期保存食を指していましたが、現在は非常食・防災食(備蓄食)と使い分けられるようになりました。
本記事では、非常食と防災食の違いをはっきりさせた上で、効果的な備蓄方法や必要量やおすすめのアイテムを紹介します。無駄なく、災害時でも美味しく食べられる備えを一緒に始めましょう。
防災食(備蓄食)と非常食の基本的な違い

非常食と防災食(備蓄食)はどちらも災害時・緊急時の食料ですが、目的と役割が異なります。
それぞれの特徴を知った上でバランスよく準備することが、長期化する避難生活を乗り切る鍵となります。次項では、それぞれの特徴を詳しく解説します。
【非常食】生命維持を目的とした最低限の食料
非常食は、災害時の備蓄のベース(土台)として用意する食料を指します。これは、災害発生直後の混乱期や避難時に命をつなぐため、サバイバル(生存)を最優先に設計されています。
非常食の特徴
- 3年〜10年以上の長期保存が可能
- 調理不要ですぐエネルギー摂取できる
- 管理の手間がかからず、防災リュックに入れたまま保管できる
- 乾パン、アルファ米、長期保存クッキーなど
「味が単調」「普段の食事と調理・工程が違う」などのデメリットはありますが、管理の手間がかからないので備蓄の基盤として欠かせません。
【防災食】日常でも美味しく食べられる備え
防災食(備蓄食)は、避難生活の長期化を見据えて準備する食品を指します。長期間に及ぶ避難生活に備えるための食料です。
普段の生活で食べているものを少し多めにストックし、定期的に消費しながら備蓄するローリングストックに基づいています。
防災食(備蓄食)の特徴
- 賞味期限は1年〜2年程度
- 味のバリエーションが豊富
- 普段から食べ慣れているため抵抗なく食べられる
- レトルトカレー、パスタソース、カップスープ、缶詰など
定期的に消費して買い足す管理の手間はありますが、常に新しい賞味期限のものが手元にあるので、食品ロスを防ぎやすくなります。調理せずに常温で食べられる、またはカセットコンロでお湯を沸かして調理できる食品がおすすめです。
なぜ防災食(備蓄食)・非常食の備蓄が重要なのか

日本は自然災害の多い国です。災害が発生すると日常生活を支える仕組みが機能しなくなるため、食料確保が困難になります。
内閣府は最低3日分、できれば1週間分の備蓄を推奨していますが、それには次項で解説する明確な理由があります。
各種ライフラインが断絶するリスク
災害時には電気・ガス・水道が停止し、普段の食事が取れないため、事前の備蓄が不可欠です。
ライフライン断絶のリスク
- 冷蔵庫の食材が腐敗する
- IH調理器や電子レンジなど、調理家電が使えない
- 断水により調理がままならない
- ガスの停止でお湯を沸かせない
普段、家電製品やスーパー・コンビニに頼っている生活は、ライフラインが途絶えた瞬間に破綻するかもしれません。
調理不要で常温保存できる防災食・非常食があれば、復旧するままでの間、自力で食事を確保できます。
空腹は体力を奪うだけでなく、精神的なストレスにもつながります。家族の健康と安全を守るため、状況に左右されない食料を備蓄しておきましょう。
救援物資を受け取れるとは限らない
大規模災害が起こると少なくとも最初の3日間は人命救助が優先されるため、事前の備蓄が欠かせません。
避難時に備蓄が必要な理由
- 人命救助が優先され、避難者の支援は遅れる可能性がある
- 交通網の遮断によって物資輸送が困難になる
2024年に発生した能登半島地震では、「一人分のおにぎりがピンポン玉1つ分」「水はコップ半分」などのケースもありました。
※参考:朝日新聞
食料を自分で確保しなければ、「空腹が続いてストレスになる」「栄養の不足で体調を崩す」といったリスクがあります。避難生活を想定して、最悪の事態に備えましょう。
防災食(備蓄食)・非常食を備蓄する際の重要なポイント

防災食を備蓄する際は、ただ保管するだけでなく、いざというときに役立つよう工夫が欠かせません。次項では、効果的な備蓄をするための重要なポイントを5つ紹介します。
ポイント① 賞味期限切れを防ぐローリングストック
防災食の管理には、ローリングストック(循環備蓄)が有効です。普段食べているレトルトなどを少し多めに買い置きし、日々古いものから消費して、食べた分を買い足すシンプルな方法です。
ローリングストックには、以下のように3つのメリットがあります。
ローリングストックのメリット
- 賞味期限切れによる廃棄をほぼゼロにできる
- 「備蓄=特別」という意識がなくなり、日常生活の延長で無理なく継続しやすい
- 普段から食べ慣れた味を備蓄できるため、災害時に子どもが嫌がるの防げる
まずは、家族が好きなレトルトカレーやパスタソースを多めに購入することから始めましょう。日頃から食べている食事であれば、避難生活でも抵抗なく食事が取れます。
ポイント② 栄養バランスとアレルギー対応の確認
備蓄用の食品を選ぶ際は、栄養バランスとアレルギー対応の確認が不可欠です。防災食・非常食は、エネルギー確保を優先するため、おにぎりやパンなどの炭水化物に偏りがちです。
しかし、炭水化物ばかりの生活が数日続くと、ビタミン・ミネラル・タンパク質などが不足して、体調不良を引き起こすリスクが高まります。口内炎や便秘だけでなく、免疫力低下により風邪をひきやすくなるかもしれません。
避難生活で体調不良にならないように、以下の3点に着目して備蓄用の食品を選びましょう。
栄養バランス・アレルギー情報のポイント
- 長期保存用の野菜ジュース、魚・肉の缶詰を取り入れて栄養バランスを整える
- 家族に食物アレルギーがある場合は原材料を必ず確認
- 特定原材料等28品目不使用などのアレルギー対応専用食品を確保する
避難所ではアレルギー対応食が手に入らない可能性が高いので、自前の備蓄を充実させましょう。
ポイント③ 調理不要で食べられるものを選ぶ
備蓄用の食料には、調理不要ですぐに食べられるものを必ず含めてください。災害時は、「ガスが使えない」「水が足りない」などの状況も想定されます。
水やお湯が必要なアルファ米に加えて、以下のアイテムも用意しておきましょう。
調理不要の食品
- レトルトのお粥、長期保存用のカレー
- 開封してすぐに食べられるパンの缶詰
- ゼリーやバーなどの栄養補助食品
上記のアイテムを備蓄しておくと、ライフラインが断絶してもすぐにエネルギー補給が可能です。特に発災直後の混乱期や疲労困憊して調理する気力がないとき、調理不要な食品が役立ちます。
カセットコンロや水を備蓄しておけば、温かい食事を確保できるので、できる範囲で備蓄を進めましょう。カセットコンロ・ボンベについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
ポイント④ 食べ慣れた食品を選ぶ
備蓄食料を選ぶ際は、家族が美味しいと感じるものを優先してください。
不安や過度なストレスがかかる中、食事は数少ない楽しみであり、心のケア(精神安定)につながります。だからこそ「非常時だから味は我慢する」という考え方はおすすめできません。
食べ慣れない乾パンや、味の薄い保存食ばかりでは食欲がわかず、体力を落としてしまう原因になりかねません。たとえば、いつも利用しているメーカーのカップ麺やお菓子、お気に入りの缶詰など、普段から食べているものを選びましょう。
平時に一度試食をして、「これなら災害時でも食べたい」と思えるものをリストアップしておくと、備蓄の失敗を防げます。
ポイント⑤ 長期保存できる食品も備蓄する
ローリングストックに加えて、5年以上長期保存が可能な非常食も併せて備蓄しましょう。忙しくて買い足しを忘れたり、体調不良で買い物ができなかったりすると、在庫が尽きてしまうリスクがあります。
そのため、普段は手を付けず、クローゼットの奥や防災リュックに保管する、「守りの備蓄」としての長期保存食が大切です。
攻めのローリングストックと守りの長期保存食の併用で、管理の手間を減らしつつ確実な備えが完成します。
防災食(備蓄食)・非常食の目安量

南海トラフ巨大地震のような大規模災害発生時、支援体制の整備や物流網の復旧には約1週間かかると予想されています。そのため、最低でも3日分、理想は1週間分を目安に備蓄を進めましょう。
※参考:政府広報オンライン|今日からできる食品備蓄。ローリングストックの始め方
防災食・非常食の目安量は次のとおりです。
防災食・非常食の目安量
- 食料:1人1日3食 × 家族の人数 × 日数
- 水 :1人1日3リットル × 家族の人数 × 日数
たとえば、4人家族の場合、3日で36食、1週間で84食が必要です。
水の場合、3日で36リットル、1週間では84リットルが推奨されます。水の量が多いと感じるかもしれませんが、これは飲料水だけでなく調理用の水も含んだ量です。
長期保存用の非常食は割高なので、すべてそろえようとするとコストがかかります。最初の3日分はローリングストック食品、残りの4日分は長期保存食と区分することで、備蓄の負担を抑えやすくなるでしょう。
備蓄が初めての人は、以下の記事で解説する1日分からスタートしてみてください。
【ジャンル別】おすすめの防災食(備蓄食)・非常食
防災食は主食からおかず、スープまで、さまざまな種類が販売されています。バランス良く備蓄するためには、ジャンルごとに適した食品を選ぶことが欠かせません。
次項では、代表的なおすすめの防災食をジャンル別に紹介します。
【主食】おすすめのご飯やパン
災害時の食事で優先すべきは、体を動かすエネルギー源となる主食の準備です。ご飯やパンといった炭水化物は活動の基礎となるため、長期保存可能な以下の食品を選びましょう。
おすすめの主食
- アルファ米:保存期間5年以上、複数の味を選ぶ
- 缶詰パン :朝食やおやつ用として、1日1個分を購入
アルファ米は軽量でかさばりにくく、緊急用の持ち出し袋にも入れて携帯できます。食べ慣れたご飯を避難生活で食べられるため、備蓄として欠かせない食料です。
缶詰パンは避難生活中では貴重は「甘味」の役割も果たします。子どもでも食べやすく、あると安心する食料です。
味のバリエーションも考慮しつつ、災害時でも飽きずに食事ができる備蓄を整えましょう。
【主菜・副菜】栄養が取れるおかずやスープ
炭水化物ばかりでは栄養が不足するため、おかず類やスープ食品も備蓄に加えてください。
おすすめの主菜・副菜
- おかずの缶詰:コンパクトで持ち運びやすく、バリエーションが豊富
- レトルト食品:長期保存タイプ、温め不要の商品もあり備蓄におすすめ
- スープ食品 :高齢者の方も飲みやすく、水分と栄養を同時に補給できる
また、栄養バランス対策として、長期保存が可能な野菜ジュースや乾燥野菜もおすすめです。野菜不足になりがちな避難生活で、手軽に栄養を補えます。
避難生活における野菜不足の対策については、以下の記事でも詳しく解説しています。
【その他】心の栄養になる甘いもの
避難生活ではコンビニ・スーパーを利用できない可能性もあり、「甘いもの」は心を癒す役割もあります。さらに、手軽にカロリーを摂取できるため、非常食・防災食の備蓄では甘いものも加えましょう。
おすすめの甘いもの
- 栄養補助食品 :カロリーメイトやチョコレートバーなど、食べやすいもの
- お菓子の缶詰 :備蓄用は5年以上の長期保存が可能
- ようかん :高カロリーな長期保存タイプがおすすめ
- グミや飴 :日常的に消費するローリングストックで備蓄する
井村屋のえいようかんや、ビスコ保存缶といった、5年保存できる専用のお菓子も販売されています。子どもがいる家庭では、日常的に食べ慣れたお菓子をローリングストックとして多めに備蓄しておきましょう。
災害時でも日常の一部を再現できるので、心の安定につながります。
防災食(備蓄食)・非常食で今日から備蓄を始めよう
災害時の食料確保には、計画的な備蓄が不可欠です。防災食と非常食を組み合わせて不測の事態に備えましょう。
防災食・非常食の組み合わせ方
- 防災食:ローリングストック用、食べ慣れた味を確保する
- 非常食:買い替え不要の備蓄、押し入れや防災リュックへ保管
この2つを併用することで、コストを抑えながら、美味しく、無駄のない備蓄を実現できます。まずは今日、スーパーでレトルト食品や水を少し多めに購入することから始めてみましょう。
その小さな一歩が、もしもの緊急時にあなたと家族を守る大きな力となります。
また、備蓄が初めての人は、「収納スペースの確保」「管理への慣れ」も含めて1日分の食料備蓄から始めてみましょう。1日分の備蓄については、以下の記事で詳しく解説しています。

